はじめに
街の片隅にひっそりと立っている「公衆電話」。昔は友だちとの待ち合わせ、家への連絡、深夜の帰り道……そんな日常のいろんな場面で活躍してくれた、大切な通信手段でしたよね。平成の頃は、緑の公衆電話やカラフルなテレホンカードを使った思い出がある方も多いはずです。
今ではスマホが当たり前になり、公衆電話を使う機会はすっかり少なくなりました。でも、なぜ街から姿を消していったのか、そしてどうして今も完全にはなくならないのか──意外と知られていないこともたくさんあります。
この記事では、公衆電話の歴史や仕組み、日本の設置基準、そして平成を彩った“懐かしい文化”としての側面まで、やさしく解説していきます。あの頃を思い出しながら、ゆっくり読んでみてくださいね。
公衆電話の歴史|どう始まり、どう普及したのか?
初期の公衆電話と「自動電話」のはじまり
公衆電話が生まれたのは、まだ一般家庭に電話がほとんどなかった時代です。電話機そのものが高価で、事務所やお金持ちの家にしか置けなかったころ、人々が「必要なときだけ使える電話」として登場したのが、公衆電話でした。
アメリカでは、街頭に設置された有料電話に硬貨を入れて使うスタイルが広がっていきます。しかも初期のしくみはとてもシンプルで、硬貨を入れたときの「チャリン」という音を交換手が聞き分けて、5セントなのか10セントなのかを判断していたと言われています。
こうした有料の街頭電話は「automatic telephone」と呼ばれていて、日本ではこれを訳して「自動電話」と呼ぶようになりました。人が常にそばにいなくても、お金を入れれば誰でも使える──当時としてはかなり画期的な仕組みだったんです。
世界中に広がった公衆電話と電話ボックス文化
20世紀に入ると、電話網の整備が進み、世界各国で公衆電話が普及していきます。自宅に電話がない人でも、街角や駅に行けば電話がかけられる。これは「社会のインフラ」として、とても大きな意味を持っていました。
雨風をしのげるように、屋外には「電話ボックス(電話ボース)」と呼ばれる小さな建物のような設備が作られます。透明なガラス張りのボックスは、街の風景の一部としても印象的で、映画やドラマのワンシーンにもよく登場しました。
昭和〜平成にかけての日本でも、駅前や商店街、学校のそば、公園の端っこなど、少し人の集まる場所にはたいてい公衆電話がありました。待ち合わせ前に「とりあえず公衆電話から家に電話する」なんて経験がある方も多いのではないでしょうか。
平成の日本と公衆電話の全盛期
日本の公衆電話が最も活躍していたのは、まさに平成が始まったころから、携帯電話が一気に普及する前後までの時期です。
- 緑色の公衆電話機が街中のあちこちにあった
- テレホンカードを自販機やコンビニで買って使うのが当たり前だった
- お気に入りのデザインのカードをコレクションする人も多かった
特にテレホンカードは、企業広告や観光地の写真、アニメ・アーティストの限定デザインなど、バリエーションがとても豊富で、実用品でありながら「ちょっとした collectible(コレクションアイテム)」としても楽しまれていました。
さらに、公衆電話は災害時にも重要な役割を果たします。大きな地震や停電が起きたとき、携帯電話がつながりにくくなる一方で、公衆電話だけは比較的安定して通話できた、というエピソードも各地で残っています。

こうした経験もあって、日本では今でも公衆電話が完全には姿を消さず、インフラとして残されているのです。
公衆電話が減った理由|携帯普及と街からの消失

携帯電話・スマホの急速な普及
街の公衆電話が一気に姿を減らした最大の理由は、やっぱり携帯電話の普及です。平成後半になると、ほとんどの人が自分専用の携帯を持つようになり、「わざわざ公衆電話を探す必要がない」という状況になりました。
その結果、公衆電話の利用回数は激減。維持費のほうが大きくなり、採算が取れない場所から順番に整理されていきます。かつては駅にずらりと並んでいた電話ボックスも、今ではひとつだけ残っている…という景色が当たり前になりましたよね。
海外ではほぼ撤去、日本との違いは?
アメリカでは、公衆電話は1999年に約200万台ありましたが、スマホの普及により2018年にはわずか約10万台まで激減したと言われています。ニューヨークでは、電話ボックスが撤去されてLinkNYCと呼ばれる無料Wi-Fiスポットに置き換えられるなど、「街の通信インフラ」として別の役割に変わりつつあります。
国によって事情はさまざまですが、民間企業が運営している国ほど「採算が取れない → 撤去する」という判断が早く、公衆電話は跡形もなく消えてしまった地域も少なくありません。
日本ではなぜ残っているのか?
実は日本の公衆電話は、世界的に見てもかなり残っている国のひとつです。その理由は明確で、総務省が定める「設置義務」があるからなんです。
- 市街地:1km四方に1台
- その他の地域:2kmに1台
このルールがあるおかげで、公衆電話は完全に姿を消さず、最低限の数が維持されています。特に災害時には、公衆電話が非常に強い通信手段として役立つため、今も社会に必要なインフラとして扱われているのです。

「滅多に使わないけど、なんとなく置いておいてほしい」──そんな存在感が、公衆電話にはあるのかもしれませんね。
公衆電話の仕組みと種類
料金の支払い方法と日本独自のポイント
公衆電話の大きな特徴といえば、やっぱり料金の支払い方法です。世界では硬貨のみが一般的ですが、日本には少しユニークな歴史があるんです。
- 硬貨式(10円・100円):もっとも基本的なタイプ
- テレホンカード式:日本独自の“磁気カード方式”
テレホンカードは1980年代〜2000年代にブームとなり、観光地デザイン、アニメ柄、企業広告など、さまざまな種類が登場しました。公衆電話を利用したことがなくても「テレカだけは懐かしい」という方も多いかもしれませんね。
ダイヤル式からプッシュ式へ|操作方式の進化
昔の公衆電話といえば、くるくる回すダイヤル式。このタイプは世界の多くの国で使われていましたが、操作に時間がかかるうえ、壊れやすいという課題もありました。
その後、現在のようなプッシュ式が主流になり、操作がスピーディーで簡単に。日本では早い段階でプッシュ式が広まりましたが、東南アジアや旧ソ連圏の地域では、今でもダイヤル式が残っているところもあります。
街の風景を彩った「電話ボックス」の種類
公衆電話が屋外に置かれるときには、雨や雪をしのぐために電話ボックス(電話ブース)が使われます。日本では時代によってデザインが異なり、街の魅力のひとつにもなっていました。
- A-BOX形(1964〜):東京五輪前後に普及した四角いデザイン
- C-BOX形(1991〜):ガラス面が多い、近代的なスタイル
- 丹頂形(1954〜):赤い頭がかわいい“丹頂鶴”デザイン
平成の街を歩けば、ガラス張りのC-BOXがよく見られましたよね。夜になると照明がほんのり光って、ちょっとした“安心スポット”のように感じた方もいるのではないでしょうか。
海外に残る“人が料金を集める”公衆電話
世界には、料金徴収機能がついていない公衆電話も存在します。特に発展途上国では、以下のような方式が続いている地域も。
- 商店の前に電話機を置き、店員さんが料金を管理する
- 料金は「あと払い」で口頭で伝えられることも
- 携帯電話を使った「移動式公衆電話屋」が開業するケースも

ウガンダには自転車に電話を積んだ“移動型公衆電話”まであり、国や地域の事情によって、公衆電話の姿は驚くほど多様なんです。
日本の公衆電話の設置基準と運営の仕組み
公共性を守るための仕組み
公衆電話は、もともと「誰でも使える通信手段」として生まれました。そのため、国によっては公共インフラとして扱われ、利益よりも「社会にとって必要かどうか」が重視されます。
日本ではNTTが中心となって設置・管理を行っていますが、これは単に“電話サービス”という枠に留まらず、災害時の通信確保という大きな使命があるからなんです。
日本は設置義務がある珍しい国
海外では採算が取れないと撤去されるケースが多い中、日本では国のルールで最低限の数の公衆電話が維持されています。これは総務省が定める設置基準によるものです。
- 市街地:1km 四方に 1台
- その他の地域:2km に 1台
このルールによって、公衆電話は「使われなくても置いておくべきもの」と認識されています。特に災害が多い日本では、この考え方はとても重要ですよね。
委託公衆電話・特設公衆電話とは?
公衆電話には、実はあまり知られていない種類もあります。
- 委託公衆電話:商店や施設内に設置され、運営を委託するタイプ
- 特設公衆電話:災害やイベント時に臨時で設置されるタイプ
- 特殊簡易公衆電話:交通機関や特定施設向けの簡易タイプ
昭和〜平成の商店街で「店内に公衆電話あります」という貼り紙を見たことがあれば、それは委託公衆電話の可能性が高いですね。駅や体育館に臨時で置かれる電話は“特設”タイプだったりします。
展示施設で今も見られる公衆電話
公衆電話の歴史を知ることができる展示施設も存在します。
- NTT技術史料館(東京)
- 門司電気通信レトロ館(福岡)
- 日本初期の電話ボックスの再現展示
- ドライブスルー式公衆電話(愛知県日進市)

こうした施設では、昔の電話ボックスやダイヤル式公衆電話を見ることができ、電話文化の歴史に触れられます。
公衆電話の進化と“平成レトロ文化”
テレホンカードが生んだコレクション文化
公衆電話の全盛期を語るうえで欠かせないのが、やっぱりテレホンカードですよね。カードを挿して残量を確認しながら使うあの感覚…懐かしく感じる方も多いはずです。
当時のテレカは実用品であると同時に、デザインの豊富さからコレクションアイテムとしても人気でした。
- アニメ・キャラクター柄
- アイドル・アーティストの限定デザイン
- 鉄道・観光地の記念カード
- 企業広告カード
特に平成前半は「使うのがもったいなくて、つい集めてしまう」という人が続出。財布にお気に入りのテレカを何枚も入れていた…という思い出、ありますよね。
待ち合わせ文化と公衆電話
スマホがなかった時代、待ち合わせの連絡手段といえば公衆電話でした。
- 「着いたら駅前の公衆電話から電話してね」
- 電車が遅れたら公衆電話に並んで家へ連絡
- 深夜、家族へ迎えの電話をする定番スポット
こうした日常の風景は、平成のコミュニケーション文化そのもの。スマホが普及した今となっては、逆に“温かさ”や“懐かしさ”を感じる場面でもあります。
街角を彩った電話ボックスの存在感
平成の街には、ガラス張りの電話ボックスが自然と溶け込んでいました。夜になるとボックス内がふわっと光り、小さな避難所のように感じたこともあったかもしれません。
特にC-BOX形の電話ボックスは、平成の都会のシンボルのひとつ。写真に残っていると、当時の雰囲気が一気によみがえりますよね。
展示施設で再評価される“通信文化”
令和に入ってから、公衆電話は「レトロ文化」として再評価され、展示施設で紹介されることも増えてきました。技術の進化を振り返ると、たった数十年でここまで変わったのかと驚かされます。
公衆電話に関連するおすすめアイテム
ここからは、公衆電話や通信の歴史に興味がある方へ向けて、楽しめるアイテムをご紹介します。懐かしさを感じるミニチュアや、電話の仕組みがしっかり学べる本など、記事との相性もバッチリです。
タカラトミーアーツ 公衆電話ガチャコレクション
緑の公衆電話や懐かしい電話機が精巧に再現された人気シリーズ。平成レトロ好きにはたまらないクオリティです。
電話はなぜつながるのか|NTT電話・IP電話・携帯電話の基礎知識
通信のしくみを分かりやすく解説した定番書籍。公衆電話の原理や現代の通信まで一気に理解できます。
日本と海外の公衆電話の事例比較
公衆電話はどの国にもある“共通の文化”と思われがちですが、実は国ごとに姿や仕組みが大きく違います。ここでは、日本と海外の公衆電話を比べながら、その特徴を見ていきます。
アメリカ:AT&TやVerizonによる公衆電話網
アメリカでは民間企業が公衆電話を運営してきました。特に有名なのがAT&TやVerizonの回線を使った街頭電話です。
しかし携帯電話の普及により、公衆電話は急激に減少。1990年代末には約200万台あったものが、2018年には約10万台ほどに。ほとんど見かけなくなり、大都市の一部にわずかに残る程度になっています。
ニューヨークでは、古い電話ボックスが撤去されてLinkNYCと呼ばれる無料通話・無料Wi-Fi端末に置き換えられ、街の通信インフラとして新しい形へと変化しました。
台湾:日本と似たスタイルの公衆電話文化
台湾の公衆電話は、日本のスタイルにとても近く、硬貨式が中心です。
- 中華電信
- 台湾固網
これらの回線を使った公衆電話が街中に設置されており、「5元玉・10元玉はお釣りが出ません」といった表記も日本とそっくり。観光で訪れた方が「日本にいるみたい」と驚くことも多いです。
ウガンダ:自転車で移動する“モバイル公衆電話”
ウガンダでは、よりユニークな公衆電話の形が存在します。なんと、自転車に無線式の電話を積んだ“移動型公衆電話”が活躍しているんです。
これは固定電話網が十分に整備されていない地域で、誰もが電話を使えるようにする工夫。電話機のそばに人がいて料金を徴収する方式も残っており、まさに「地域に合わせて進化した通信手段」といえるスタイルです。
国によって事情やニーズが異なるため、公衆電話は驚くほど多様な形に姿を変えているんですね。
災害時の公衆電話の役割
携帯電話がつながらないときに“最後の砦”になる
日本が公衆電話を維持し続けている大きな理由が災害時の強さです。地震や停電が起きると、携帯電話は基地局の混雑や電力不足でつながりにくくなります。しかし、公衆電話は以下の特徴から比較的安定して使えるんです。
- 専用の電話回線で通信量の影響を受けにくい
- 停電時も通話可能な“非常電源機能”を持つ機種が多い
- 優先電話として扱われ、災害時に規制を受けにくい
東日本大震災では、公衆電話に行列ができ「唯一つながる電話」として大活躍しました。こうした経験から、公衆電話は今も災害対策の要として維持されています。
災害用伝言ダイヤル(171)と公衆電話
災害発生時には、家族の安否を伝える手段として災害用伝言ダイヤル(171)が利用できます。公衆電話からは利用しやすく、安否確認のための重要な手段になっています。
なぜ「完全になくならない」のか
使う人が少なくなったのに、公衆電話が街に残り続ける理由。それは日本が自然災害の多い国であり、緊急時の通信方法を複数持っておく必要があるためなんです。

便利なスマホ時代になっても、公衆電話には「命を守る」ための大きな価値があります。
まとめ
かつて街中のあちこちで見かけた公衆電話。携帯電話やスマホの普及で利用機会は減りましたが、歴史を振り返ると「通信インフラ」として社会を支えてきた、とても重要な存在でした。
日本では総務省が設置基準を定めていることもあり、利用者が減った現在でも、最低限の数がしっかり維持されています。特に災害時にはスマホよりも安定してつながる場面も多く、“最後の砦”としての役割も果たし続けています。
平成の時代を歩んだ私たちにとって、公衆電話は単なる道具ではなく、思い出の一部でもあります。ガラス張りの電話ボックス、財布に入れたテレホンカード、待ち合わせで慌ててかけた電話…。そうした記憶を思い出すと、ちょっとあたたかい気持ちになりますよね。
これからますますデジタル化が進んでも、街角にぽつんと残る公衆電話は、どこか安心感のある“平成レトロの象徴”として存在し続けるのかもしれません。
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よくある質問
- Q公衆電話はこれから完全になくなるの?
- A
日本では設置義務があるため、しばらくは完全に消えることはありません。特に災害時の通信手段として重要視されているため、最低限の数は維持され続けます。
- Q災害時に公衆電話がつながりやすいのはなぜ?
- A
公衆電話は専用回線でつながっていて、携帯電話のように基地局が混雑する影響を受けにくいからです。また、停電時にも動く機種が多く、災害時に“優先通話”として機能します。
- Qテレホンカードは今でも使えるの?
- A
はい、現在も多くの公衆電話で利用可能です。ただし、公衆電話の数が減っているため、以前ほど使う場面は多くありません。残量が残ったテレカを持っている場合は、災害時の連絡手段として保管しておくのも一つの方法です。




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