1990年代後半、日本の携帯ゲーム機といえば「ゲームボーイ」が当たり前だった時代。そんな空気の中で、まったく違う発想から生まれたゲーム機がありました。それが、バンダイのワンダースワンです。
縦でも横でも遊べる本体デザイン、単3電池1本で驚くほど長く動く省電力設計、そして“枯れた技術の水平思考”という独自の思想。ワンダースワンは、派手さよりも理にかなった面白さを追求した、かなり尖った携帯ゲーム機でした。
ただし結果だけを見ると、ワンダースワンは任天堂の牙城を崩すことはできず、市場から姿を消すことになります。 それでも今なお、「発想は正しかった」「時代が追いつかなかった名機」と語られる理由があるのも事実です。
この記事では、ワンダースワンがどんな背景で誕生し、どんな工夫が詰め込まれ、なぜ消えていったのかを、平成という時代の文脈と一緒にわかりやすく整理していきます。 さらに、今だからこそできる楽しみ方や、現代のレトロゲーム視点での再評価にも触れていきます。
「名前は知っているけど、実はよく知らない」 「昔ちょっと気になっていた」 そんな人が、ワンダースワンというゲーム機をきちんと理解できる入口になればうれしいです😊
ワンダースワンとは何か
ワンダースワンは、1999年にバンダイが日本国内で発売した携帯型ゲーム機です。開発には、任天堂で「ゲームボーイ」を生み出した横井軍平が深く関わっており、彼が独立して設立した「株式会社コト」とバンダイの共同プロジェクトとして誕生しました。

当時の携帯ゲーム機市場は任天堂がほぼ独占していた状況。それでもワンダースワンは、“もっと軽く、もっと長く遊べる携帯機をつくる”というシンプルな理想からスタートし、既存の路線とは違う価値を打ち出そうとしました。これが、後に語られる「枯れた技術の水平思考」という思想です。
また、デザインやプロモーションも特徴的で、従来の「子ども向けゲーム機」とは異なる路線を採用。ターゲットは15〜19歳の若い層で、ポップで洗練されたビジュアルや音楽を用いた広告展開が印象的でした。

コストを抑えつつも独創的な構造を持つワンダースワンは、「他のゲーム機とは違う面白さ」を提案した非常にユニークな存在でした。
開発の背景と設計思想
1990年代後半、携帯ゲーム機の市場は任天堂のゲームボーイシリーズが圧倒的なシェアを持っていました。そんな状況でもバンダイが新たに参入した背景には、「たまごっち」などのヒットで勢いがあったこと、そして“自社で独自のゲームハードを持ちたい”という強い意欲がありました。
そこで開発パートナーとして選ばれたのが、任天堂で多くのヒット作を生んだ横井軍平が設立した株式会社コトです。横井氏が掲げた思想が、ワンダースワンの根幹にある「枯れた技術の水平思考」でした。
これは、最先端の部品に頼るのではなく、成熟して安価で信頼性の高い技術を工夫して組み合わせるという考え方です。結果として、ワンダースワンは省電力で軽量、そして価格を抑えた“合理的な携帯ゲーム機”として仕上がりました。
また、ターゲット層にもバンダイらしい工夫があります。ワンダースワンは10代後半の若者に向けて、都会的でスタイリッシュな広告を展開しました。ゲームボーイより少し大人っぽいデザインやイメージ戦略は、当時の市場ではかなり挑戦的だったと言えます。

こうして、既存の携帯ゲーム機とは異なる「軽い・長持ち・合理的」という個性を備えたワンダースワンが誕生しました。
ハードウェアの特徴と革新性
ワンダースワンが当時の携帯ゲーム機と一線を画していたのは、その独創的なハードウェア設計にあります。価格を抑えながらも、遊びの幅を広げる工夫が随所に盛り込まれていました。
縦横どちらでも遊べるデザイン
最大の特徴は、ゲーム内容に応じて縦持ち・横持ちを切り替えられる点です。本体には2組のボタン(X・Yボタン群)が配置され、パズル・シューティングは縦、RPGやアクションは横と、タイトルに合わせて最適な持ち方が選べました。
携帯ゲーム機でここまで柔軟な操作性を実現した例は珍しく、ワンダースワンの象徴的な仕様と言えます。
驚異的な電池寿命
「単3電池1本で30〜40時間」という圧倒的な省電力も魅力でした。これは、モノクロのFSTN液晶や低消費電力のCPUを採用し、徹底的に無駄を削った設計によるものです。
長時間遊べる携帯ゲーム機は当時非常に貴重で、ライトユーザーにも評価される大きな強みになりました。
16ビットCPUによる高い処理能力
搭載されているNEC V30MZ(16ビットCPU)は、ライバル機であるゲームボーイカラー(8ビット)よりも高性能。 派手な3Dこそできませんが、2Dゲームの表現力や処理速度に優れており、RPGやパズルゲームでその力を発揮しました。

ワンダースワンは「コストを抑えながら、遊び心地は妥協しない」という合理的で無駄のない設計思想を体現したハードだったのです。
初代ワンダースワンを「今でも快適に遊ぶ」方法
ここまで紹介してきたように、初代ワンダースワンは「軽い・長持ち・合理的」という魅力にあふれた携帯ゲーム機です。しかし、どうしても避けられなかった弱点があります。それが、モノクロ液晶の暗さと視認性の低さです。
当時のFSTN液晶は省電力のメリットがある一方で、バックライトがなく、光の当たり方によっては画面が非常に見えづらくなることがありました。これは現代の環境で遊ぶと、どうしても気になるポイントです。
そこで最近注目されているのが、初代ワンダースワン専用のIPS液晶への換装キットです。バックライト搭載のIPS液晶に交換すると、コントラストや視認性が段違いに向上し、どんな環境でもストレスなくプレイできます。
実際にモノクロの名作タイトル(『GUNPEY』『デジモン』など)を快適に遊びたい人には、非常に相性の良いアップデートです。 レトロゲームとして保存するだけでなく、“遊べるコンディション”に戻す改造として人気を集めています。
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このように、初代ワンダースワンは“そのまま楽しむ”だけでなく、“現代仕様にアップデートする”ことで、さらに魅力が広がるゲーム機なんです。
モデルの進化と違い
ワンダースワンシリーズは、発売からわずか数年の間に3つのモデルが登場しました。それぞれに特徴と改善点があり、世代ごとの違いを知ると、より深くワンダースワンの進化が見えてきます。
① ワンダースワン(1999年)
シリーズの原点となるモノクロモデル。軽量・省電力というコンセプトを徹底し、単3電池1本で長時間遊べるのが最大の魅力でした。 カラーバリエーションも豊富で、携帯ゲーム機としての“デザイン性の高さ”が評価された初代機です。
② ワンダースワンカラー(2000年)
ユーザーの要望に応える形で誕生したカラー液晶モデル。画面がカラー化されたことで表現の幅が広がり、RPGやアニメ原作タイトルの見栄えが大きく向上しました。
ただし、採用されたSTN液晶は暗く残像が出やすいという課題があり、この点は当時のユーザーからも賛否が分かれるポイントでした。
③ スワンクリスタル(2002年)
最終モデルとなるスワンクリスタルでは、ついにTFT液晶が採用され、コントラスト・明るさ・応答速度が大幅アップ。 シリーズの中で最も完成度が高く、「視認性」「遊びやすさ」という面では最高のワンダースワンです。

このようにワンダースワンシリーズは、短いスパンで改良を重ね、「省電力の初代 → カラー化の第2世代 → 画面品質を磨いた最終世代」という流れで進化していきました。
ワンダースワンカラーの評価と「惜しかった点」
初代ワンダースワンの成功を受けて誕生したのが、2000年発売のワンダースワンカラーです。画面がカラー化されたことで、RPGやアニメ系タイトルの表現力は一気に向上し、多くの人気シリーズがこのモデルを前提に移植されました。
とくに『ファイナルファンタジー』シリーズのリメイク作品や、『デジモン』『スーパーロボット大戦COMPACT』など、グラフィックの色味や雰囲気が重要な作品にとって、カラー液晶は大きな魅力でした。
しかし最大の課題は「画面の暗さ」
一方で、採用されたSTN液晶は残像が出やすく、光の条件によっては画面が見づらくなるという弱点がありました。 当時はコストや省電力の問題もあり、TFT液晶を使うことが難しかったため、どうしても“惜しい”と言われるポイントになってしまいます。
当時のプレイヤーからは、
「カラー化は嬉しいけど、もう少し画面が明るければ…」 といった声も多くありました。
現代では「IPS液晶換装」で大幅改善
最近では、ワンダースワンカラー専用のバックライト付きIPS液晶が登場し、画面品質を一気に現代レベルへ引き上げることが可能になりました。 明るさ・色再現性・残像の少なさが圧倒的に向上し、「当時の名作を今の環境で遊びやすくする」ための定番アップグレードとなっています。
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カラーモデルの魅力を最大限に引き出すには、液晶品質がとても重要。 「惜しかった名機」を「今遊んでも快適な名機」に変えてくれる、心強い選択肢です。
ソフトウェアと名作タイトル
ワンダースワンシリーズは、ハードの独自性だけでなく、意欲的なソフトラインナップでも注目を集めました。 とくに“モノクロでも面白い”“縦持ちを活かす”といった、ワンダースワンならではのゲームデザインが多く存在します。
GUNPEY(グンペイ)
ワンダースワンを語るうえで欠かせないのが、横井軍平氏の名前を冠した『GUNPEY』です。 シンプルながら中毒性の高いパズルゲームで、縦持ち操作の快適さを最大限に生かした名作でした。 携帯ゲーム向けのパズルとして、今でも評価の高い一本です。
ファイナルファンタジー(リメイク版)
スクウェア(現スクウェア・エニックス)がワンダースワン向けに提供したFFシリーズのリメイクは、ハードの存在感を一気に高めたタイトル群でした。 『FF I・II』の美しいグラフィックは、ワンダースワンカラーのカラー表現を引き出すうえで大きな役割を果たしました。
デジモンシリーズ
バンダイの看板IPでもあるデジモンは、ワンダースワンとの相性が非常に良いタイトルでした。『デジモンアドベンチャー』や『デジモンテイマーズ』など、アニメ・玩具との連動性を活かした作品が多数登場しています。
スーパーロボット大戦COMPACT
携帯機向けスパロボとして高い評価を得ていたのが『スーパーロボット大戦COMPACT』シリーズです。 軽快なテンポとワンダースワン画面に合わせたUIが魅力で、戦略シミュレーションとしての完成度は非常に高い作品でした。

ラインナップ全体を見ると、ワンダースワンは“携帯機らしさ”を追求したゲームが多く、縦持ち・省電力・軽快さといった特徴がしっかり活かされています。 そのため、今プレイしても古さより「独自性の面白さ」を感じられるタイトルが多いのが特徴です。
周辺機器という異色の挑戦
ワンダースワンシリーズには、バンダイらしい「遊びの幅を広げるための周辺機器」が数多く存在しました。 どれも独自性が強く、携帯ゲーム機でここまでチャレンジングな拡張を行った例は、当時としてはかなり珍しいものでした。
ワンダーウィッチ
もっとも象徴的だったのが、アマチュア向け開発キットの「ワンダーウィッチ」です。 C言語でゲーム開発ができ、実際にオリジナル作品をワンダースワンで動かすことができるという、非常に先進的な試みでした。
“個人開発者を支援する文化”を20年前に先取りしていたと言っても過言ではありません。
ワンダーウェーブ
続いて登場したワンダーウェーブは、なんとPlayStationの「ポケットステーション」と赤外線通信ができるアダプタ。 家庭用ゲーム機と携帯ゲーム機を連携させるという、これまた時代を先取りした挑戦でした。
モバイルワンダーゲート
さらに野心的だったのが、携帯電話と接続してメールやミニゲームをダウンロードできる“モバイルワンダーゲート”です。 今でいうスマホ連携やストア機能の“原型”のような仕組みで、当時としては非常に先進的なネットワーク機能でした。
これらの周辺機器は必ずしも大ヒットしたわけではありませんが、「こういう使い方もできるのか!」と感じさせる独創性にあふれており、ワンダースワンがただの携帯ゲーム機ではなかったことを象徴しています。
ワンダースワンを「保存・研究する」という楽しみ方
レトロゲームとしての価値が再評価されている現在、実機を保存したり、ソフトデータを研究目的で記録するという楽しみ方も広がっています。 ワンダースワンは物理カートリッジの構造上、経年劣化が起きる可能性があり、長期保存を考えるコレクターにとっては“バックアップの作成”が重要になることもあります。
もちろん、ゲームデータの取り扱いには法的・倫理的な注意が必要ですが、あくまで自分が所有しているソフトを保存する目的で利用されるツールも増えてきました。
とくにワンダースワンカラー向けの吸い出しツールは、研究・保存の文脈での利用として注目されています👇
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コレクターにとっては、大切なカートリッジを長く残すための“保全手段のひとつ”として認識されており、レトロゲーム文化の保存という面でも需要が高まっています。
市場での結果と撤退の理由
ワンダースワンシリーズは、1999年の初代発売から数年間で累計約350万台を販売し、一時期は日本国内の携帯ゲーム機市場で約8%のシェアを獲得しました。 任天堂一強の市場で存在感を示したこの数字は、当時としては十分に健闘したと言える結果です。
しかし、その後の携帯ゲーム機市場には、より強力なライバルが登場します。2001年のゲームボーイアドバンスです。 高性能・明るい液晶・豊富なソフトラインナップという三拍子が揃ったGBAの登場は、ワンダースワンにとって大きな打撃となりました。
さらに、ワンダースワンはサードパーティーのタイトル数が限られていたことも影響しました。 初期はスクウェアの参入などで勢いがあったものの、その後は大型IPの供給が減少し、ラインナップの幅が徐々に狭まっていきます。
こうした状況が重なり、2003年にはワンダースワンの生産は受注生産へと移行。事実上の市場撤退となりました。
とはいえ、ワンダースワンが残した価値は大きく、 「軽量・省電力・縦横両対応」という独創的なコンセプトは、今見ても唯一無二の存在です。 実際にレトロゲームファンの間では、現在でも再評価の声が高く、改造パーツや保存用ツールの登場によって“今遊べる平成レトロ機”としての魅力が広がっています。

市場競争に敗れたとしても、ワンダースワンは平成のゲーム文化に確かな足跡を残した名機でした。
まとめ
ワンダースワンは、ただの“ゲームボーイ対抗機”ではありませんでした。 横井軍平氏の「枯れた技術の水平思考」という思想を軸に、軽さ、省電力、縦横両対応といった他にはない個性を追求し続けた、非常にユニークな携帯ゲーム機です。
確かに市場競争では任天堂に勝つことはできませんでした。しかし、その挑戦は今振り返ると驚くほど先進的で、機能的にも思想的にも“平成らしい革新性”に満ちています。 周辺機器の実験的な仕組みや、名作ソフトの独自性など、語り継ぎたくなる魅力がぎゅっと詰まっていました。
そして現在では、IPS液晶換装などのアップデートパーツによって、昔より遊びやすくなるという逆転現象も起きています。 レトロゲーム機としての価値が再評価されている今こそ、ワンダースワンは改めて触れてみる価値のある一台だと思います。
平成のゲーム文化を象徴する“静かな名機”。 ワンダースワンの魅力を、この記事をきっかけにもう一度感じてもらえたら嬉しいです😊
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よくある質問
- Qワンダースワンは今でも遊べる?
- A
はい、遊べます。ただし初代モデルやカラー版は液晶の暗さが気になることがあるため、IPS液晶換装を行うと現代でも快適に楽しめます。スワンクリスタルは比較的見やすいので、そのまま遊ぶ人も多いです。
- Q今から買うならどのモデルがおすすめ?
- A
そのまま遊ぶならスワンクリスタルが最も視認性が高いです。改造前提なら初代機やワンダースワンカラーにIPS液晶換装を施すのも人気です。プレイしたいタイトルに合わせて選ぶのがおすすめです。
- Qワンダースワンのソフトは手に入りやすい?
- A
中古市場では比較的入手しやすいものの、人気作や限定版は価格が上昇傾向にあります。保存を意識するコレクターの間では、吸い出しツールを併用して所有ソフトの長期保全を行う人も増えています。



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